【新型ルノー・カングー 2025】売れてないって本当?サイズ拡大・装備進化の実力を徹底検証

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新型のあの「カングー」がなぜか、気になる・・

僕はこれまで、速さを求めて多くのスポーツカーやレーシングマシンに乗ってきたし、今もサーキットを走り、心を震わせている。だが不思議なことに、ある一台だけは、速さでも高級感でもないのに、ずっと心に引っかかっている——そう、「カングー」だ。

あれは試乗で触れたほんの短い時間だった。けれど、ハンドルを握った瞬間に感じた「これ、なんかイイな」という感覚は、どこか懐かしく、そして心地よかった。クルマ好きの琴線に触れるような何かが、確かにそこにはあった。

実は僕、家族と過ごすキャンプの時間が大好きで、週末になる荷物を積んで山や海へ出かけている。でもふと、「もし、これがカングーだったら…?」と想像してしまうのだ。無骨だけど愛嬌のある顔つき、大きな積載スペース、そしてどこか“余白”のある自由な雰囲気——そう、カングーには、僕が求める“余白”がある。

2024年、そのカングーがついにフルモデルチェンジされた。3代目となる新型カングーは、サイズも装備も大きく進化し、まるで別モノのように見える。ネットでは「でかすぎる」「売れてない?」という声も飛び交う。果たして、新型カングーは本当に“変わってしまった”のか?それとも、変わらずに「らしさ」を残しているのか?

本記事では、その実力を徹底検証する。かつてのカングーに惹かれ、今もなお気になって仕方ない僕が、新型カングーに再び触れ、その進化の本質を確かめていく旅に、少しだけお付き合い願いたい。

新型カングー 2025年モデルの概要|「可愛い商用車」は、もう卒業した。

まず、新型カングーを語る上で最初に触れておきたいのは、その“存在感の変化”だ。旧型までのカングーには、どこか牧歌的で、ほっこりとしたムードが漂っていた。けれど新型は違う。フロントフェイスの造形はシャープに、ボディ全体のプロポーションもグッと引き締まり、「欧州のプレミアムミニバン」と言っても通用する風格すら感じさせる。

実際、ボディサイズは堂々たるものだ。全長は4.49m、全幅1.86m、そして全高は1.83m。かつてのカングーを「ちょっと大きなコンパクトカー」だと表現していたなら、今のカングーは「ミドルクラスの本格派ミニバン」だ。しかもロングホイールベース仕様(Grand Kangoo)に至っては5m近い全長を誇り、もはやアルファードやセレナと同じ土俵に立ったといっても過言ではない。

このサイズ拡大にはもちろん理由がある。新型カングーは、日産や三菱と共有するCMF-CDプラットフォームを採用し、居住性と積載力を徹底的に強化した。後席の足元スペースは大人でも余裕があり、リアドアの開口も広く、チャイルドシートの乗せ降ろしにも配慮されている。家族を乗せる空間として、着実に進化を遂げたと感じる。

特筆すべきは、日本市場向けに用意された「リミテ」や「クルール」などの限定仕様だ。ディーゼルエンジンに6速MTを組み合わせた「リミテ」は、かつての“カングーらしさ”を今に伝える一本芯の通ったモデル。対して「クルール」は年に一度、限定色で発売されるスペシャルモデルで、ファンからは“カングーの祭り”とまで言われる存在。これらのモデルが新型でも健在なのは、正直ホッとした。

そう、デザインもサイズも変わった。でも、カングーが大切にしてきた「日常のちょっと外側へ連れて行ってくれるクルマ」という哲学は、ちゃんと息づいている。その“芯”が変わっていないことこそ、僕がこのクルマに惹かれる理由なのだと思う。

「売れてない」のウワサは本当か?|数字の裏側にある、カングーの“選ばれ方”

新型カングーが登場して以来、SNSやYouTubeのコメント欄でよく見かける言葉がある——「売れてないっぽいよね?」という声だ。確かに、街中で見かける頻度は旧型と比べて決して多くはない。僕自身、まだ新型の姿を本牧の街で見かけたことは片手で数えられる程度だ。

では、実際に新型カングーは“売れていない”のだろうか? データを紐解くと、その答えは単純ではないことがわかる。

まず、ルノー全体の販売動向を見ると、2025年前半は欧州市場を中心に堅調な推移を見せている。ところが、商用車カテゴリー(LCV)は前年同期比で約29%減という厳しい数字が出ている。これは欧州における物流需要の一時的な減少や、EVシフトによる買い控えなど、複数の要因が絡んでいる。

一方、日本市場においては、3代目カングーのような“サイズの大きい輸入車ミニバン”に対するニーズそのものがニッチであることも背景にある。先代の2代目カングーは、ちょうどよいサイズ感とMT仕様、そして個性的なデザインが絶妙にマッチしてヒットした。しかし新型は、より広く、より洗練され、より“輸入車らしい”一台へと変貌した。その変化に、戸惑いを覚えたファンがいるのも事実だ。

だが、ここで強調しておきたいのは、新型カングーは“売れていない”のではない。“万人に売ろうとしていない”のだ。これはルノーの戦略であり、哲学でもある。

あくまで新型カングーは、「積極的にこのサイズ感とキャラクターを選ぶ人」に向けて作られている。乗りたい人が明確にイメージできるクルマ。それは逆に言えば、ライバルとは一線を画す「選ばれ方をする一台」だということだ。

大衆に迎合せず、けれど日常の中で確かな個性を放つ。カングーは、そんなクルマだ。売れ筋ではないかもしれないが、“好きな人にはたまらない”存在であること。それが、新型カングーが持つ最大の魅力なのかもしれない。

サイズと居住性|なぜ“手に入れていないのに、ここまで気になる”のか。


人は、まだ手にしていないものにこそ、強く心を奪われる。
新型カングーが、まさに僕にとってそうだ。所有していない、なのにどうしてこんなにも気になるんだろう。たぶんそれは、「クルマ」以上の何かを、あの広い室内が宿しているからだと思っている。

初めて試乗したとき、正直そのサイズに驚いた。あの可愛らしかった2代目カングーの面影は薄れ、今や堂々たる“欧州ミニバン”へと進化している。全長4.49m、全幅1.86mというボリューム感は、国産ミニバンと比べても決して引けを取らない。それどころか、室内に一歩足を踏み入れた瞬間に感じたのは、「ここ、もう部屋じゃん…」という感覚だった。

ただの数字では測れない“空気感”が、そこにはある。空間の高さ、幅、奥行き。そのすべてが、家族との時間を大切にしたい大人にとって、必要にして十分な余白を与えてくれる。モノを積むための広さじゃない。思い出を育てるための広さなんだ。

リアスライドドアの開口は驚くほどワイドで、子どもが自分で乗り降りしても安心。後席の足元には大人が正座できるほどのスペースがあり、荷室の床は低く、重たいキャンプギアもストレスなく積み込める。そしてなにより感動したのは、後部座席を倒して現れる“寝られるフラットスペース”だ。

僕の頭の中には、はっきりとした情景が浮かんでいた。
秋のキャンプ場、タープの下で焚き火を囲み、子どもたちがはしゃぎ疲れて眠ったあと——クルマの中で妻と静かに語らう夜。
リアゲートを開け、夜空を見上げながら、カングーの中で眠る家族の寝息を聞く。
そんな“ありふれていて、何よりもかけがえのない一日”が、この空間には、きっと似合う。

たしかにこのサイズでは、コインパーキングや立体駐車場では神経を使うかもしれない。けれど、それは日常の一部だ。カングーが本領を発揮するのは、“日常の外側”に一歩踏み出した瞬間なのだと思う。

まだ所有していない。でも、家族の笑顔や、忘れたくない時間の映像だけは、すでにこのクルマの中に焼き付いている。
カングーには、人を惹きつける「理由」じゃなくて、「物語」がある。
だから僕は、今日もまたこのクルマのことを考えている。

内装・装備の進化|“商用車感”は、本当に消えたのか?


正直に言えば——これまでのカングーにとって、最大の課題は内装だった。
「可愛い」「楽しい」そんな空気はある。けれど、運転席に座って視線を前に向けたとき、どこかに「これは商用車だな」という質感が拭えなかった。だからこそ、乗っていて楽しい反面、もう一歩“家族のクルマ”として愛しきれない、そんな距離感があった。

では新型はどうか?
結論から言うと、確実に一線を越えてきた。
いや、今も少し“商用車感”は残っている。けれど、それは決してネガティブな意味ではなく、「無駄がなく、理にかなった使い勝手の良さ」という言葉に変換できるような、芯の通った潔さがあるのだ。

まず目に入るのは、水平基調のインパネデザイン。
ナビ画面が大きくなり、センターに構えた各種スイッチ類はわかりやすく配置されている。助手席側には広い物置スペースがあり、ドアポケットやシフト下の収納など、「ここに欲しかった」がちゃんとある。これは“機能”のデザインであり、“生活”のための設計だ。

それが象徴的なのが、ダッシュボード上のスマホホルダー付きトレイや、オーバーヘッド収納スペース。
運転席に座るだけで、「このクルマは生活の現場をちゃんと知ってるな」と感じる。まるで、仕事と遊びを両立する“デキる同僚”のような頼もしさだ。

さらに、安全装備もしっかりと進化している。
自動ブレーキ、車線維持支援、後方警戒レーダー、ドライバー疲労検知など、現代の家族車に必要とされる機能は一通り網羅。「フランス車はちょっと不安」という先入観を持っている方にこそ、今のルノーは体験してほしいと強く思う。

とはいえ、高級感で言えば、国産のミドルクラスミニバンの方が数段上かもしれない。
ウッド調パネルやメッキ加飾、光るアンビエントライトのような演出は、ここにはない。
でも——僕は、それがいいと思っている。
余計な“飾り”じゃなく、本当に必要な“道具”としての誠実さ。
そこにこそ、カングーが長年愛され続けてきた理由があるのではないだろうか。

質感は確かに上がった。
だけど、それ以上にこの内装には、“信頼できる雰囲気”がある。
毎日を支え、週末を彩ってくれる。そんな空間が、ここにはある。

ライバル比較|ベルランゴとカングー、僕らが選ぶのはどっちだ?


もし今、あなたの目の前に「ルノー・カングー」と「プジョー・ベルランゴ」の2台が並んでいたとしたら——。
その選択は、ただのクルマ選びではなく、“どんな週末を過ごしたいか”という人生の選択なのかもしれない。

プジョー・ベルランゴは確かに魅力的だ。EV専用となった日本仕様「e-ベルランゴ」は、滑らかな加速と上質な内装、そして何より“シトロエン”や“オペル”とも共通するスタイリッシュな雰囲気を持っている。運転席に座ると、「このまま都心のカフェにでも行こうか」という気分になる。

一方で、カングーは違う。内装にギラついた装飾はなく、素材も武骨なままだ。けれど、そこには“生きている空気感”がある。
仕事のあと、そのままキャンプ場に向かい、後ろに積んだギアを降ろして、焚き火の煙を浴びながら夜を迎える——そんな生活の延長に自然と溶け込む雰囲気が、カングーにはある。

ベルランゴが“都会的な冒険”を演出してくれるクルマだとすれば、カングーは“ありのままの自分に帰れる場所”のような存在だ。
価格帯は近く、装備も互角。だが、選ぶ基準は、きっと数字ではない。

たとえば、どちらが「走って楽しいか」と聞かれれば、答えに迷う。
EVのスムーズさが好きな人はベルランゴを選ぶだろうし、MTでクルマを操る楽しさに魅力を感じる人は、迷わずカングーのディーゼル6MTを選ぶはずだ。

僕が今、迷っているのもそこだ。EVの未来も嫌いじゃない。でも、人の手のぬくもりを感じる“生活車”に、どうしても惹かれてしまう。
それはきっと、家族と過ごす時間に“リアル”を求めているからだろう。

プジョー・ベルランゴとルノー・カングー。
どちらが優れているか、という問いに意味はない。
どちらが“自分らしい時間”を与えてくれるか。
それが、この2台のクルマと向き合う、唯一の正解なのかもしれない。

新型カングーで後悔しないために知っておくべきこと


クルマって、買う前の時間がいちばん楽しい——そう思っている人も多いかもしれない。
でも僕は、違う。買ったあとに「やっぱり、これで良かった」と思えるクルマこそ、本物だと思っている。
だからこそ、この記事を読んでいるあなたが、もし今カングーを本気で検討しているなら、この項目は飛ばさずに読んでほしい。

1. 故障リスクと“輸入車あるある”への理解

まず気になるのは、やはり「故障しないのか?」という点だろう。
確かに、過去のカングーにはトラブル報告も多かった。エアコンの故障、スライドドアの建て付け不良、電装系のトラブル…。だが、それは“昔のフランス車”の話だ。

新型カングーは、品質管理も設計精度も大きく改善されており、日本市場向けには5年保証(距離無制限)が標準で用意されている。
もちろん、国産車と同じ感覚ではいけない部分もある。だが、正規ディーラーとの関係性さえ築いておけば、むしろ“ちゃんと向き合ってくれる輸入車”として付き合えるはずだ。

2. オプションの選び方|「これだけは付けておけ」

次に迷うのがオプション選びだ。
新型カングーはグレード構成がシンプルな分、オプションの選択が個性を大きく左右する。僕が絶対に勧めたいのは、ナビ+全周囲カメラのセット。
カングーのボディは大きい。慣れれば取り回しに不満はないけれど、狭い道や駐車場では死角が気になる。これがあるだけで、精神的な余裕がまるで違う。

それと、個人的に外せないのがルーフバー
キャンプ好きなら、この上に積む道具の選択肢が一気に広がる。車内はリビング、ルーフは倉庫。そんなふうに使い分けられるのがカングーの強みだ。

3. 実走インプレッション|街・山・高速、それぞれの顔

最後に、少しだけ走りの話をしよう。
カングーは速くない。けれど、遅くないし、何より疲れない。
街中ではスムーズに流れに乗り、高速道路ではしっかりと安定感がある。そして、ワインディングでは意外なほど“フランス車らしい粘り”が顔を出す。

山道でググッとロールしながらも、4輪がしっかりと踏ん張る感覚は、まるで大柄な犬と一緒に走っているような頼もしさがある。助手席の妻も安心して身を任せてくれる。それは、走りの楽しさというより「一緒にいる時間の心地よさ」と言った方が正しいかもしれない。

まとめ|カングーは“売れてない”のではない。“選ばれし人”の一台だ


新型カングーを試乗して以来、どうしても気になって仕方がない。
スペックで見れば他にも候補はあるし、価格で選べばもっと手頃なクルマもある。
でも、それでも——なぜか、このクルマのことを考えてしまう。

その理由はきっと、このカングーが単なる「移動手段」ではなく、“一緒に時間を過ごす相棒”として、自分の人生に静かに入り込んでくるからだろう。

広い空間に荷物を積んで、家族とキャンプ場へ向かう。
夜にはクルマの中で寝袋にくるまり、子どもたちの寝息を聞きながら星を見上げる。
そんな風景が、カングーのドアを開けるたびに浮かんでくる。
それは、他のどんなクルマでも描けない“時間の物語”だ。

そして、こんな結論にたどり着いた。
家族と過ごす時間を大切にしたい今の自分には、カングーが最適な一台だ。
でも、もしもいつか、娘たちが巣立ち、僕が“ひとり旅”を楽しむような年齢になったとしたら——
そのときは、静かに走るベルランゴに乗って、静かに旅をしたいと思うかもしれない。

カングーというクルマは、もはや単なる“乗り物”ではない。
それは、ひとつの「文化」であり、「仲間たちの輪」であり、そして「生き方」そのものなのだ。

その象徴が、「カングー・ジャンボリー」だ。
毎年集まる数百台のカングーとそのオーナーたち。
あの光景を初めて見たとき、思わず鳥肌が立った。
同じカングーは、ふたつとしてない。
みんな思い思いに手を加え、好きなように楽しみ、カングーを“人生の一部”として生きている。

ステッカーひとつ、ルーフキャリアひとつにも、その人の旅と人生の記憶が詰まっている。
キャンプ道具、子どもの落書き、犬の足跡、ラゲッジに残った砂——それらすべてが、カングーというキャンバスに描かれている“物語”なのだ。

カングーは、万人に売れるクルマじゃない。
でも、人生のある地点で「自分にとって、これしかない」と思わせてくれるクルマなのだ。

“売れてない”なんて声が聞こえることもある。
だけど僕はこう言いたい。
これは、「売るため」じゃなく、「選ばれるため」に作られたクルマだ。
そして、選ばれた者だけが、このクルマの本当の価値を知ることになる。

人生の風景に、ぴたりとはまる一台。
それが、ルノー・カングーという名のクルマだと、僕は信じている。

——いや、もしかしたら・・・
“カングー”って名前の、ちょっと抜けた響きに、僕は完全にやられてるのかもしれない。
だってさ、「カングー」って……ずるいくらい、響きが可愛いじゃん(笑)。

峯村翔

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