2020年、あのクルマが走り出したとき──
「これだよ、スバルはやっぱりこうじゃなきゃ」
そう思わず口にした人も、きっと少なくなかったはずだ。
1.8L直噴ターボが生む、ほどよく力強く、それでいてしなやかな加速。
SGPのしっかりとした土台に、AWDの安心感。
目を見張るほど派手じゃないけれど、走れば確かに「自分の手足になる」感覚があった。
──それが、先代レヴォーグ。
あれから6年。
2026年、あのクルマが、また新しくなるらしい。
しかも今度は、まったく新しいS:HEVハイブリッドという心臓を手に入れて。
え?ハイブリッド? 本当に走りは変わらないの?
でも、ちょっとだけワクワクしている自分がいる。
先代に感じた“手応え”が、次の時代ではどう生まれ変わるのか。
今までの良さを、どうやって守り、どうやって超えてくるのか。
これは、どちらが優れているとか、劣っているとか、そういう話じゃない。
先代を愛した人たちと一緒に、「次のレヴォーグ」を迎える準備をするための物語だ。
一緒に、比べてみよう。
感じたこと、忘れられなかったこと、そして、これからに期待したいことを。
デザインの違い──無骨から洗練へ、スタイルはどこまで進化したか?
先代レヴォーグのデザインを見て、「格好いい」と即答できる人は、それほど多くなかったかもしれない。
でも、そのボディラインには、“走りの道具”としての誠実さがあった。
押し出し感より、機能美。
飾り気のなさが、むしろ信頼感を与えてくれた。
ちょっと武骨で、でもちゃんと走れる。そんな空気が、先代にはあった。
では、新型はどうか。
公式発表はまだだが、スバルの新しいデザインテーマ「BOLDER(ボールダー)」が採用される可能性が高いと言われている。
無駄を削ぎ落としながらも、“未来に向けて踏み出す意思”を感じる大胆な造形。
横一文字のヘッドライト、絞り込まれたフェンダー、より低くワイドに見えるフォルム。
──それは、スバルのデザインが「初めて、感性に触れてくる瞬間」かもしれない。
正直なところ、期待してしまう。
あの実直なレヴォーグが、洗練という言葉を纏ったら、どんな表情になるのか。
子供のころ、父のクルマを見て「かっこいい」と思えなかった自分が、
大人になって、同じスバルに“惚れ直す”瞬間が来たら──。
それは、ちょっとだけ感動してしまう気がする。
パワートレインの違い──1.8LターボからS:HEVへ、走りは変わるか?
あのエンジン音が、好きだった。
1.8Lターボの静かな咆哮。
回せば素直に伸びて、でも無理はしていない。
山道でも、高速の合流でも、「ちょうどいい速さ」が、そこにあった。
だから、最初に「S:HEVが載る」と聞いたとき──
少しだけ、身構えてしまった。
え、レヴォーグまでハイブリッドに?
あの“素の良さ”は、どこへ行ってしまうんだろう?
──でも、よく考えてみれば。
スバルが、ただ燃費のためだけに心臓を変えるなんて、そんなことするわけがない。
S:HEVには、電気の“即答性”がある。
アクセルを軽く踏んだだけで、トルクがふっと立ち上がる。
そこにスバルの水平対向エンジンが絡めば、まるで深呼吸するような加速ができるかもしれない。
しかもそれが、AWDで地面をしっかりつかんだまま、
どこまでもスムーズに伸びていくとしたら──。
ターボの楽しさとは違う。
けれど、新しい“気持ちよさ”が、そこにある気がしてならない。
この先、走りがどう変わっていくのか。
──それを最初に教えてくれるのが、レヴォーグになる。
そう思った瞬間、ハンドルを握る指先が、ちょっとだけうずいた。
走行性能の違い──SGP進化型+電動AWDのポテンシャル
スバルのハンドルを握ってきた人たちは、みんな知っている。
「速い」よりも、「信頼できる」ことが、どれだけ心を落ち着かせてくれるか。
シンメトリカルAWD、水平対向エンジン、低重心。
曲がりくねったワインディングでも、吹雪の高速でも、
いつも地面と繋がっている安心感──それがスバルの“走り”だった。
スバリストと呼ばれる人たちは、その感触に魅せられた人たちだ。
彼らにとってスバルとは、単なる移動手段じゃない。
人生の中で信じられる数少ない“相棒”なのだ。
だからこそ、いま新型レヴォーグの電動化には、期待と同じだけの不安がある。
「ハイブリッドになっても、あの一体感は残るのか?」
「電動トルクでごまかすような走りにはなってほしくない」
そんな声が、SNSの片隅で静かにささやかれている。
でも、同時に──
「新しいAWD制御が、もっとクルマを自在に操れるようになるかもしれない」
「SGPの進化で、乗り味がさらに洗練されるはず」
といったポジティブな期待感も、確かに存在している。
つまり今、スバリストたちは
「変わってほしくない」と「変わってほしい」の間で揺れている。
それだけ、スバルの走りに深く惚れ込んできた証拠だ。
その気持ちに、スバルがどう応えるのか。
──S:HEV搭載の新型レヴォーグには、ただのスペック以上の責任が託されている気がしてならない。
インテリアと装備──11.6インチ大画面と次世代UIの使い勝手
クルマのドアを閉めたときの、あの包まれるような静けさ。
エンジンを始動するときの、わずかな緊張と高揚感。
それだけで、今日という一日が少しだけ前向きになる。
先代レヴォーグのインテリアには、そんな力があった。
華美ではなく、むしろ地味にすら見えるコックピット。
けれど、スイッチ一つひとつに“道具としての誠実さ”が宿っていた。
運転席に座ると、背筋が伸びる。
このクルマと一緒なら、どんな天気の日でも、どこへでも行ける気がしていた。
2026年、インテリアは大きく変わる。
11.6インチの縦型ディスプレイを中心に、操作系はよりスマートに。
デジタルメーターやオンライン連携といった装備が、日常に溶け込んでくる。
時代は、確かに前へ進んでいる。
けれど、少しだけ不安になる気持ちもわかる。
「本当に使いやすいのか?」
「あのクリック感が消えてしまうのでは?」
「味気ない“タブレットの中のクルマ”になってしまわないか?」
でも──
思い出すのは、後席で子どもが眠っていた帰り道。
ナビ画面に指先で触れながら、眠る横顔をミラー越しに眺めていた、あの夜。
あの空間で、時がゆっくり流れていたこと。
それは、内装の素材やスイッチの配置だけでは語りきれない。
次のレヴォーグも、きっとまた「記憶を刻む場所」になる。
そのために、新しい装備やUIがあるのだと信じたい。
かつて走ることが人生だった人にも、
いま日常と向き合う誰かにも、
静かに寄り添ってくれる空間──それが、次のインテリアに求めたいものだ。
アイサイトXの進化──ドライバー補助から、共走の領域へ
誰かに見守られていると気づいたとき、人は安心して前に進める。
それは人間関係でも、そして、運転でも同じだ。
スバルのアイサイトは、単なる“事故を減らすシステム”じゃない。
ドライバーとクルマが、呼吸を合わせて走るための“共走技術”だと思っている。
前を見て、左右を気にして、必要ならブレーキを踏んで。
まるで隣に誰かが座っていて、「大丈夫、一緒にいるよ」と声をかけてくれているような──
そんな温かさを、アイサイトは持っていた。
新型レヴォーグでは、そのアイサイトXがさらなる進化を遂げると言われている。
交差点での自動減速、カメラの高精細化、ステアリングアシストのスムーズさ──
数字で語れば簡単だ。でも、本当にすごいのは、「この先に何があるか」がわかるようになってくることだ。
たとえば、
夕暮れの見通しの悪いカーブを曲がるとき、
前のクルマが突然ブレーキを踏んだとき、
判断が一瞬遅れそうな、あの場面。
次のアイサイトは、その“迷い”の先に、先回りして寄り添ってくれる。
人間の勘や経験だけでは届かない領域に、確かな判断と優しさを添えてくれる。
もちろん、それでも最後にハンドルを握るのは、自分自身。
でも、その背中をそっと押してくれる存在があるだけで、
こんなにも運転が、安心で、楽しいものになるなんて。
これからのレヴォーグは、きっとこう言ってくれる。
「ひとりで運転してるんじゃない」と。
この道の先も、あの長距離の夜も、
信頼という名のテクノロジーが、静かに寄り添ってくれる。
まとめ:先代から未来へ──レヴォーグがつないでいく走りの記憶
2020年に登場した2代目レヴォーグは、スバルの走りを信じる理由を、もう一度教えてくれた。
SGPの剛性感、1.8Lターボの絶妙なトルク、研ぎ澄まされたアイサイト。
それは単なる“新型”ではなく、スバリストにとっての「答え」だった。
だからこそ、2026年に登場する新型には、大きな期待と同時に、不安もある。
S:HEVという新しい心臓。
デジタル化されたインテリア。
そして、「走ることが楽しい」と感じられるクルマになっているのか。
スペックだけを見れば、たしかに大きな進化だ。
けれど、スバリストが求めているのは、数字ではない。
ハンドルを握ったとき、クルマが「信じてくれている」と感じられるあの一体感。
レヴォーグはいつだって、“操る歓び”の真ん中にいた。
その精神が、たとえハイブリッドになっても宿り続けるなら──
きっとまた、心が動く。
新型レヴォーグには、まだ見ぬ走りが待っている。
だから、少しだけ不安があっても、それ以上に楽しみにしている。
また走りたくなる。
もう一度、夢中になってみたくなる。
それが、スバルのクルマじゃないか。
…よし。
発売までに、サーキット用のグローブでも新調しておこう。
いや、その前に。
まずは少し、体を鍛えておくことにする。
久しぶりに、“本気で走らされる”予感がしてきたから。
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