山崎豊子の小説『花のれん』と、2017年に放送されたNHKの朝ドラ『わろてんか』。
どちらも吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにしており、日本のエンターテインメント業界の発展に関わる物語として知られています。
しかし、両作品にはどのような違いがあり、それぞれどのように吉本せいの人生が描かれているのでしょうか?
この記事では、『花のれん』と『わろてんか』の関係や、吉本せいと吉本興業の歴史について詳しく解説します。
- 小説『花のれん』と朝ドラ『わろてんか』の共通点と違い
- 吉本興業の創業者・吉本せいの実話との関係
- 吉本せいが日本のエンターテインメント業界に残した功績
『花のれん』とは?山崎豊子が描いた女性興行師の物語
『花のれん』は、山崎豊子のデビュー作として1957年に発表された小説です。
明治から昭和にかけて大阪の寄席文化を支えた女性興行師の奮闘を描いた作品で、第39回直木賞を受賞しました。
本作は吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにしたフィクションであり、商才と努力で寄席経営を成功させた女性の人生をリアルに描いています。
直木賞を受賞した山崎豊子の名作
『花のれん』は、当時まだ新人作家だった山崎豊子の出世作となった作品です。
女性が社会進出することが難しかった時代に、興行師として成功を収める女性を主人公に据えたことが画期的でした。
また、商売のリアルな厳しさや、大阪の寄席文化が細かく描かれ、読者に強い印象を与えました。
主人公・河島多加のモデルは吉本せい
本作の主人公・河島多加は、実在の人物・吉本せいをモデルにしたキャラクターです。
多加は大阪・船場の商家に嫁ぎ、道楽者の夫・河島吉三郎とともに寄席経営を始めますが、夫が急死したことで一人で興行を続ける決意を固めます。
このストーリーは、実際に吉本せいが夫・吉本泰三の死後、興行を引き継いだ実話と重なります。
吉本興業の創業物語を元にしたフィクション
『花のれん』は史実をもとにしたフィクションとして描かれており、実話とは異なる点も多くあります。
例えば、登場人物の名前や寄席の名称などはフィクションとして変更されており、ドラマ性を強調したストーリー展開になっています。
それでも、女性が男性社会で奮闘する姿や、商売人としての機転と努力といったテーマは、吉本せいの実話と通じるものがあります。
そのため、『花のれん』はエンターテインメント作品としての魅力と、歴史的な価値の両方を兼ね備えた作品として今なお読み継がれています。
朝ドラ『わろてんか』とは?吉本興業の歴史を描いた作品
2017年に放送されたNHKの連続テレビ小説『わろてんか』は、吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした作品です。
『花のれん』と同じく女性興行師の奮闘を描いていますが、より明るく、コメディ色の強い作風となっています。
また、朝ドラらしく家族の絆や夫婦の愛がテーマになっており、笑いと涙にあふれた感動作として多くの視聴者に愛されました。
ヒロイン・藤岡てんのモデルは吉本せい
『わろてんか』の主人公・藤岡てん(葵わかな)は、吉本せいをモデルにしたキャラクターです。
物語は、明治時代の京都から始まり、てんが商家の娘として生まれるところからスタートします。
しかし、彼女は家業を継ぐことを拒み、寄席好きの青年・北村藤吉(松坂桃李)と駆け落ちし、大阪で寄席経営を始めることになります。
このストーリーは、吉本せいが大阪の商家に嫁ぎ、夫とともに寄席を経営した実話を基にしています。
夫婦で築いた笑いの帝国・吉本興業
ドラマの中で、てんと藤吉は「笑いで日本中を幸せにしたい」という夢を掲げます。
寄席経営は順風満帆とはいかず、資金繰りやライバルとの競争に苦しみながらも、てんは経営の才能を発揮し、事業を拡大していきます。
夫の藤吉が急死した後、てんは一人で寄席を守り抜く決意を固め、多くの芸人を支えながら吉本興業の礎を築いていくのです。
コメディ要素が強いエンタメ作品としての魅力
『わろてんか』は、朝ドラらしい明るい作風が特徴です。
多くの芸人キャラクターが登場し、漫才や落語のシーンがふんだんに盛り込まれています。
また、藤吉役の松坂桃李や、寄席の番頭役の濱田岳など、個性豊かな俳優陣がユーモラスな演技を見せ、ドラマに活気を与えています。
このように、『わろてんか』は吉本せいの人生を基にしながらも、より親しみやすいエンタメ作品として描かれました。
『花のれん』と『わろてんか』の違いとは?
『花のれん』と『わろてんか』は、どちらも吉本せいをモデルにした物語ですが、作風やストーリーの描き方には大きな違いがあります。
ここでは、歴史の描き方・フィクション性・ヒロインのキャラクターという3つの視点から、それぞれの特徴を比較してみましょう。
歴史の描き方の違い
『花のれん』はリアリティのある歴史小説として、吉本興業創業当時の状況や、女性が経営者として成功する苦労をリアルに描いています。
一方、『わろてんか』は朝ドラらしいエンタメ作品として、家族愛や笑いをテーマに、より親しみやすいストーリーになっています。
フィクション性の強さと作風の違い
花のれん | わろてんか |
---|---|
リアル志向のフィクション(史実に基づきつつ脚色) | コメディ要素の強いフィクション(明るく分かりやすいストーリー) |
寄席経営の厳しさや経済的な困難がリアルに描かれる | 「笑いで日本を元気に!」という夢を中心にポジティブな展開 |
ヒロインの苦悩や決断に焦点を当てる | 夫婦の愛と絆が強調される |
ヒロインのキャラクター像の違い
『花のれん』の河島多加は、商才に長けた冷静な女性経営者として描かれています。
彼女は夫の死後、ひとりで寄席を切り盛りし、時には厳しい決断を下しながら事業を拡大していきます。
一方、『わろてんか』の藤岡てんは、おっとりした性格ながら、夫とともに夢を追いかける明るいキャラクターです。
彼女は寄席を経営することに最初は戸惑いながらも、次第に「笑いの力を信じる女将」として成長していきます。
このように、『花のれん』はビジネスドラマ寄り、『わろてんか』はホームドラマ寄りの作品となっているのです。
吉本興業の歴史と吉本せいの功績
吉本興業は、日本のエンターテインメント界を代表する企業の一つであり、その礎を築いたのが創業者・吉本せいです。
彼女は、寄席経営を通じて日本の「笑い」の文化を発展させ、多くの芸人たちを育成しました。
ここでは、吉本興業の歴史を振り返りながら、吉本せいの功績について詳しく見ていきます。
大阪の寄席文化を支えた女性
明治末期、大阪では庶民の娯楽として寄席が人気を集めていました。
しかし、寄席経営は資金繰りが厳しく、成功するのが難しい事業でもありました。
そんな中、吉本せいと夫・吉本泰三は、1912年(明治45年)に大阪・天満で寄席を開業します。
夫婦二人三脚で興行を成功させましたが、ほどなくして泰三が急死してしまいます。
せいは未亡人として興行を引き継ぐ決意をし、厳しい経営環境の中で寄席の拡大に尽力しました。
芸人を支援し、笑いの文化を発展させた
吉本せいは芸人を支えることに力を注ぎました。
当時、芸人は安定した収入がなく、厳しい生活を強いられていました。
そこで、せいは芸人と専属契約を結び、安定した収入を保証するシステムを作り上げたのです。
これにより、芸人たちは安心して芸を磨くことができるようになり、寄席文化の発展につながりました。
日本のエンターテインメント界に残した影響
吉本せいの経営手腕により、吉本興業は関西を代表する興行会社へと成長しました。
その後、漫才や落語の発展にも貢献し、日本全国に「笑いの文化」を広めました。
現在の吉本興業は、テレビや映画、イベントプロデュースなど、幅広い分野で活躍しており、その基盤を築いたのが吉本せいの功績なのです。
『花のれん』や『わろてんか』を通じて描かれた「女性が経営者として成功する物語」は、彼女の実話と深く結びついており、今も多くの人に勇気を与え続けています。
まとめ:「花のれん」と「わろてんか」から学ぶ吉本興業の歴史
『花のれん』と『わろてんか』は、どちらも吉本興業の創業者・吉本せいをモデルにした作品です。
しかし、それぞれの作風や視点は異なり、『花のれん』はリアルなビジネスドラマ、『わろてんか』は明るく親しみやすいホームドラマとして描かれています。
『花のれん』と『わろてんか』の違いを振り返る
- 『花のれん』は山崎豊子による直木賞受賞作で、ビジネスの厳しさや寄席文化のリアルを描いた作品
- 『わろてんか』はNHKの朝ドラで、夫婦の愛や笑いの力をテーマにした感動作
- どちらも吉本せいの実話をもとにしているが、ストーリーやキャラクターの描き方には違いがある
吉本せいが築いた「笑いの文化」
吉本せいは、寄席経営を成功させただけでなく、芸人を支援し、日本のエンターテインメント業界を発展させた功績を残しました。
現在の吉本興業の基盤を築いた彼女の生き方は、「女性が社会で活躍するロールモデル」としても注目されています。
原作や過去の作品をチェックしてさらに深く楽しもう
『花のれん』や『わろてんか』を楽しんだ方は、原作小説や過去の映像化作品もチェックしてみるのがおすすめです。
吉本興業の歴史をより深く知ることで、「笑い」がどのように日本の文化として根付いたのかを理解することができます。
これらの作品を通じて、吉本せいが遺した精神や、日本の笑いの歴史を学んでみてはいかがでしょうか?
- 『花のれん』と『わろてんか』は吉本せいをモデルにした作品
- 『花のれん』はリアルなビジネスドラマ、『わろてんか』は家族愛を描いたホームドラマ
- どちらの作品も吉本興業の創業期と寄席文化の発展を描いている
- 吉本せいは芸人を支援し、日本の笑い文化を築いた重要な存在
- 作品を通じて、吉本興業の歴史や日本のエンタメの成り立ちを学べる
コメント